【赤】 二年 タデハラ

――出逢った頃――

[初めてその存在を認識したのは、練習試合の時。
他校からやって来た令への印象は良いものでは無かった。
どこか、軽薄そうな印象を与えてきた男は、ゲームが開始されてからも、手を抜いているようで。
最悪だ。折角の練習試合がこんなものだなんて。
だから、この男の事は｢嫌いだ｣と、そう思った。

けれど、顧問の仲のせいもあって。練習試合だけでなく合同練習などもあり、それなりに回数を重ねていれば、知った。
決して、不真面目な訳ではないらしい。最初に当たった時は酷かったけれど、その後はちゃんと真面目に向き合って打ち合うことが出来た。
それに、｢蓼原｣と。何故か懐かれてしまったのか、よく喋りかけてくるようになったのだ。
自分とは真逆とも言えるような相手だけれど、それでも明るく気さくに声を掛けてくる令に、次第に嫌悪感は無くなり、巫山戯た言を言われても容易く返せる程度の仲には、なれていった。


そんなある日。令が突然｢忍チャン｣と、呼んできた。
止めろと言っても聞く気は無いらしかった、から、俺は提案した。]

　今日の練習試合……俺が、勝てたら、もう呼ぶな。

[そして、令が勝てたなら、呼んでもいいと。
失敗した。まさか、負けてしまうなんて思ってもいなかったのに。

｢それじゃ、今日から蓼原は『忍チャン』な！｣

悔しいけれど、そう笑う令の顔は、今でも、覚えている。]

(*0) 5kidu 2017/02/05(Sun) 19時半頃